黒い絵
私が大学生の時「公共広告機構(現ACジャパン)」のCMに「黒い絵」という題名の動画があり、これを見たとき私は強い衝撃を受けたことをよく覚えています。このCMは大人に向けた(特に教育者や教育を志す人)ものだと私は思っています。今からあらすじを述べますのでそこから何が読み取れるか是非考えてみてください。
【舞台は「小学校の図画工作の授業の時間」です。先生は「画用紙に自分が思ったことを何でも自由に描いてみよう」と児童に伝えました。すると児童はお姫様を描いたりクワガタを描いたりと本当に自由に描いているようでした。
そしてとある児童の画用紙を見て先生は言葉を失います。その画用紙は全体を真っ黒に塗りつぶしたものでした。先生は「この子は心に病を抱えているのでは?」と思い他の同僚の先生にも相談します。また児童の保護者にも相談します。しかしその児童は画用紙全体を黒く塗りつぶすことを止めません。真っ黒になった画用紙が何枚も何枚も描かれていきます。先生も保護者も理由が分からずただ困惑するばかり。
そのうち児童は不登校になり保護者は病院に連れていきます。しかし医師にも理由が分かりません。とうとう学者たちがぞろぞろ集まりだし興味津々にその児童を取り囲みます。やはり学者たちにも理由が全く分かりません。それを尻目に児童は画用紙を真っ黒にしていきます。
やがて児童は入院することに。それでも病室で画用紙を真っ黒にしていきます。それを回収する看護師。すると看護師は「画用紙の中に全体が真っ黒なものばかりでなく部分的に真っ黒な画用紙もあること」に気づきます。
そこで体育館で児童が黒く塗りつぶしたこれまでの画用紙をパズルのように並べていきます。するとなんと大きな「クジラ」の絵が出来上がるではないですか!そう!少年は先生に「自由に描いてみよう」と言われたので画用紙1枚にクジラの絵を描くのではなく何枚か画用紙を黒く塗りつぶしてそれをパズルのように合わせて一つの作品をしようと考えたのでした。案の定最後の1枚を塗りつぶすと児童はパタッと手を止めました。】
さあみなさん!この「黒い絵」というお話、ここからみなさんは何を読み取りましたか?この動画は最後に「大人の価値観で子供を決めつけないでください!」というメッセージが添えられていました。つまり大人は「黒い絵=心が病んでいる」という勝手な価値観を抱いてこの児童を決めてつけていたのです。そういう価値観しか持たないので、大人である先生・保護者・医師・学者はだれもこの児童の「大きなクジラの絵を描く」という考えが理解できないのです。
大人は子供よりもいろいろ経験をしてきたので豊富な知識を有しています。しかしそれが時に真実を見極める時の邪魔になることもあるのだということをこの動画は教えてくれているように私は思いました。以前お話した「先入観」に似たようなことだと思います。これを取り除くことはとても難しいことですが、大人も子供の良き先輩として子供が「真っ白な画用紙」に何を描くのか決めつけることなく理解する努力をしたいものですね。